日本クラブハウス推進会議(会報13号 2007年9月発行)

目次

  • 巻頭言 「障害者自立支援法とクラスハウス」
  • 特集 「アジアクラブハウス会議」報告
  • 日本精神障害者リハビリテーション学会 富山大会サテライト企画に参加して
  • クラブハウス・モデルによる精神障害者の「過渡的雇用プログラム」 (職業リハビリテーション研究発表会より) 
  • お知らせ

日本クラブハウス推進会議シンポジウム自立支援法とクラブハウス ~精神障がい者の自立と社会参加・就労を推進するために~ 当事者参加と協働の地域生活支援システムの構築をめざして

2007年2月3日(土)、豊島区民センターに衆議院議員の高木美智代さん、都議会議員の橋正剛さんをお招きして、クラブハウスの制度化についてのシンポジウムを開催しました。お二人は事前に社会福祉法人 JHC 板橋会のクラブハウス サン・マリーナを訪問され、クラブハウスの意義について意見交換をしました。

シンポジウムの席上、高木さんはクラブハウスについて「大変重要な事業と認識しています」と力強く述べて、全国的な普及のための尽力を約束してくださいました。

また、橋さんは板橋区民としてサン・マリーナへの支援の継続と東京都におけるクラブハウスの普及に尽力してくださるというお話をしていただきました。

講演では高木さんがクラブハウスの制度化について以下のように印象深く語っていただきました。

「障害者自立支援法の昨年の成立、施行につきましては、大変多くの課題がございました。障害者自立支援法は地域移行の推進とか、就労支援の強化とか障がい者の方達が地域で暮らすための社会の構築を目指すものでしたけれども、法の理念を大事にしながら改革を着実に定着させていくことが大事だと思っております。そうした中で私が不安に思ってまいりましたのは、精神病院に入院した患者さん達にこれから社会復帰していただくという計画を国がたてました。今までは精神保健福祉の面につきましては国の対応も国民の対応も大変遅れている、実に悔しい思いを私自身もしておりました。そういうことから精神保健福祉の分野は今どうなっているだろうか。自立支援法に位置づけられたというものの、具体的にどういう事例が今、成功例として進められているのだろうか。そういう意識がありまして、昨年の夏、社会福祉法人 JHC 板橋会のもとを訪れ視察させて頂き、当事者や職員の方たちからお話を聞かせていただいて、大変勉強になったことは忘れることができません。私は、皆様がピアサポートを中心にしながらクラブハウス事業を展開されている姿に深く感銘致しました。と言いますのも私自身もいつ病気になるのか分からない。だれでも、身体の病気であったり、精神の病気であったり病気というのは避けられない、そういう状況があります。特に今の社会が多くのストレスを抱えている状況にありますので、もし自分が病気になった時には、クラブハウスがあって、ここで先輩達がケアをしてくれて、またピアサポートという形で自分達の体験を語って下さって、その皆様の姿に私自身大変励まされる思いで一杯でございました。そうしたことを踏まえまして、すぐに戻りまして厚生労働省の障害福祉課の皆様にもこういう所があります、「是非、見て頂きたい」と言いましたら、代々、ずっと視察に皆様お見えになっていらっしゃるようですね。ちょうど、新しい課長さんでいらっしゃいましたので、「直ぐに行きます」とおっしゃって、早速訪れて下さったようでございます。そうした皆様の取り組みを参考にさせて頂きながら、今回の自立支援法の円滑な運営のための改善策の中にはクラブハウスの事業のことも、先程、寺谷理事長さんが「法律の真中に」とおっしゃいましたけれども、真ん中まではいきませんが、大事な部分をなんとか改善策の中に入れていこうという国の姿勢を、是非汲み取って頂きたいと思っております。

今後のクラブハウス事業の方向性、今の法の中での位置づけのために、どういう措置をとっていくことができるのか、その緊急措置、経過措置としての、国として、また都道府県としてできるメニューをお示しさせて頂いたのが、今日お配りさせて頂いた資料でございます。
このクラブハウス事業は私も直接お話しを聞かせて頂き、大変大事な事業であると認識しております。これからも、精神保健福祉分野の皆様が国民の皆様からの市民権をしっかりと得られますように、そしてまたピアサポートという大切な運動が、大きく社会で皆様に対する貢献として評価をされますように、しっかりと力を尽くさせて頂きたいと思っております。

お二人の応援の声をいただき、最後に「自立支援法とクラブハウス」宣言(案)を日本クラブハウス推進会議理事会より発表し、全員一致で採択されました。

「自立支援法とクラブハウス」宣言

クラブハウスは、世界人権宣言の1948年に米国ニューヨーク市のファウンテンハウスが起源です。「私たちはひとりぼっちじゃない (We are not alone)」を合言葉に、精神障がい者の自助活動を基盤とした相互支援活動による包括的な地域リハビリテーション施設です。今や世界28カ国、約400カ所に広がっています。アジアにおいては、1986年に韓国のテファ・ファウンテンハウスが開設され、1995年の精神保健法に伴って法内事業に位置づけられ、各地で全国的に展開され、昨年はアジアクラブハウス会議の主催国になりました。

わが国では1992年(平成4年)に最初のクラブハウス サン・マリーナが東京都板橋区ソーシャルハウス事業として出発し、各地には世界クラブハウス連盟加盟のクラブハウスがあり、15年に渡る活動実践を続けています。

私たちは障害者自立支援法の施行に伴い、「当事者参加と協働の地域生活支援システムの構築」のためのモデルとして、先駆的な役割を果たしてきたクラブハウスの制度化を切望しています。

私たちの願いと夢は、支えあう責任を分かち持ち、安心して自分らしい生活や人生を送ることです。私たちは、クラブハウスで培われたパートナーシップにより、地域社会や過渡的雇用の就労の場で自信と誇りを実感しています。

クラブハウスは、社会の構成員として、意味ある仕事、意味ある人間関係を共通のものとして、自己実現と社会貢献を果たすための相互支援システムです。

私たちは、新しい障がい者福祉の時代に世界標準に基づくクラブハウスの活動が制度上に位置づけられることを願い、ここに宣言します。障害者自立支援法は、だれもが社会の構成員として、あらゆる活動に参加・参画し、支えあう責任を分かち持つ共生社会を実現するものです。

そのために求め必要とされる包括的地域自立生活支援システムは、相互支援を基盤とした独自な支援システム「クラブハウス」が必須の構成要素とするものと考えます。

障害者自立支援法に、「当事者参加と協働の地域生活支援システムの構築」のためのモデルとして、先駆的な役割を果たしてきたクラブハウスの制度化を切望しています。

平成19年(2007年)2月3日日本クラブハウス推進会議シンポジウム「自立支援法とクラブハウス」参加者一同